相模川は、夏はバーベキューや魚釣りでにぎわう憩いの場です。今回は区内を流れる相模川の歴史について紹介します。
相模川は、山梨県の山中湖、忍野八海を水源とする、総延長113kmの河川です。山梨県内では「桂川」、下流の河口付近では「馬入川」と呼ばれています。豊富な水と豊かな自然に恵まれ、漁業や農業、観光などさまざまな地域産業を育み、人々に親しまれ、昔から私たちの暮らしに欠かせない財産として大切にされてきました。
時代とともに変わってしまったものもありますが、相模川流域を歩いてみると今でも昔の様子を感じることができます。皆さんも相模川の歴史・文化に触れる旅に出掛けてみませんか。
◆相模川の歴史と文化
●アユ
江戸時代、相模川は良質なアユが捕れたため、将軍家に献上する「御菜鮎(おさいあゆ)」の産地となっていました。
昭和10年には「県下名勝史跡四十五佳選」に選ばれるほど多くの観光客が訪れ、田名には旅館や料亭が立ち並びました。観光客が屋形船に乗って鵜飼いでのアユ漁を見ながらアユ料理を楽しむ遊船会が盛んに行われ、昭和30年代まで夏の風物詩となっていました。
●水運
昭和初期まで相模川を渡るための橋がなかったため、船で人や馬、荷物を対岸に運んでいました。田名には渡船場があり、久所の渡(現在の高田橋付近にあった)は大山参詣に行く人たちも利用し、宿場町としてにぎわっていました。
また、川は昭和初期まで水運として利用され、上流からは炭、まき、木材などの山の産物を、下流からは米や肥料などの日用品を運んでいました。
●産業
大正12年の関東大震災後、都市復興のための建築資材として市内約30カ所で砂利が採取されました。その後も砂利採取は続き、この結果、井戸水の枯渇、生態系の変化、アユの減少など、相模川の環境が大きく変化したため、昭和39年に砂利の採取が全面禁止となりました。
●現在
相模川の水は、水道用水や農業用水、工業用水、水力発電として利用されていて、現在では県内の水道水の約60%を相模川水系から供給しています。また、川の開放的な空間が多くの観光客を引き付け、レクリエーションの場として親しまれています。周辺施設では、相模川流域の生き物や歴史を学ぶこともできます。
◯堤防造りに生涯を懸けた江成久兵衛
江成久兵衛は、度重なる相模川の洪水に苦しむ村人たちのために私財を投じて、約28年の歳月をかけて明治27年までに4つの堤防を完成させました。
相模川ふれあい科学館アクアリウムさがみはら敷地内「ふれあい田んぼ」には、久兵衛の銅像が立てられています。
◆~相模川の周辺施設~
●相模川ふれあい科学館 アクアリウムさがみはら
相模川の水源から河口までを再現した40mの流れのアクアリウム水槽では、上流から河口までのそれぞれの区域で暮らす生き物を見ることができます。
・展示飼育部 波多野 順さん
当館では、環境の変化により県内からいなくなってしまったミヤコタナゴを見ることができます。ミヤコタナゴは国の天然記念物に指定されていて、繁殖期である今の時期の雄は、色鮮やかな体色に変わります。
問い合わせ 相模川ふれあい科学館 アクアリウムさがみはら 電話042-762-2110
●旧石器ハテナ館(史跡田名向原遺跡旧石器時代学習館)
相模川周辺の田名塩田では、平成9年に国内最古といわれる約2万年前の建物跡(住居状遺構)が発見されました。旧石器時代と認められる建物跡としては全国唯一のものであり、11年に国史跡に指定され、遺跡公園として公開しています。
・学習指導員 池田髙明さん
相模川は生活で重要となる水場であり、漁も行われていた可能性があります。
また、シカなどの狩りや木の実の採集などにも適した土地であったと考えられ、相模川流域が旧石器時代から人々の生活の場として利用されてきたことがうかがわれます。
問い合わせ 旧石器ハテナ館 電話042-777-6371
◆中央区ガイドマップをもって歩いてみよう!
中央区ガイドマップでは、今回紹介した施設や中央区の楽しいところ、おいしいところ、きれいなところなどを巡る5つのウオーキングコースやイベントなど、区のさまざまな見どころを紹介しています。
マップは中央区役所地域振興課、区内各まちづくりセンター・公民館などで配布しています。休日はマップを持って区内を歩いてみてはいかがでしょうか。
問い合わせ 中央区役所地域振興課 電話042-769-9801
参考文献
『相模原市史 民俗編』『私たちの相模原 平成27年度版』『相模川散策路マップ』
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