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もっと知りたい!さがみはらの日本画家

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神奈川県相模原市 クリエイティブ・コモンズ

市内には数多くの日本画家がいますが、ここでは市民ギャラリーの展覧会に合わせ、院展系の画家に焦点を絞って紹介します。
「院展」は国内最大級の日本画団体「日本美術院」の公募展です。岩橋さんたちが若者だった頃は、日本画家として世に認められるために、こうした権威のある公募展で入選を重ねる必要がありました。高校球児が甲子園を目指すように、日本画家を目指す若者たちは、院展に挑戦していたのです。

・日本画って?
布に油絵の具で描いた絵を「洋画」、紙や絹に岩絵の具や墨で描いた絵を「日本画」と呼んでいます。洋風なものが描かれていても、岩絵の具で描かれていれば「日本画」になります。

◆3人の院展画家を生んだ「湘雲画塾」
《仲間×ライバル物語》
湘雲画塾は日本画家・片野湘雲さんが、昭和5年、故郷の上溝に開いた絵画私塾です。画家を目指す7~8人の若者がそこで学んでいました。当時、塾生たちのレベルの高さに他の町の画家たちが驚いたといわれています。

相模原百景を描いた
▽「湘雲画塾」吉川啓示(1910–2006 上溝出身)
警察官を務める傍ら日本画を勉強。若い頃は「おまわりさん画家」と呼ばれていました。院展には洋風な建物の作品を多く出品していましたが、相模原の名所旧跡などを淡色の水墨で描いたスケッチなども多く残しています。
・『樹齢と街』(昭和51年)

行動力あふれる鎮魂の画家
▽「湘雲画塾」伊藤弘人(1916-1988 上溝出身)
若い頃から抜群のセンスを発揮。戦後いち早く絵画愛好会を立ち上げるなど、行動力も備えていました。若い頃は温かみのある農村風景などを描いていましたが、晩年は石仏や古墳など、鎮魂をテーマにした作品を主に手掛けています。
・『籠る』(昭和44年)

双子姉妹の日本画家
▽「湘雲画塾」山本松枝(1914–1986 下九沢出身)
双子の妹・梅枝と共に女子美術専門学校(女子美術大学)で本格的に日本画を学びました。梅枝さんは早々に筆をおきますが、松枝さんは、日本を代表する女性画家の小倉遊亀さんに師事し、何気ない日常の仕草を見せる女性をさわやかに描く画家となりました。
のちに松枝さんは高齢者福祉施設で絵を教えるようになりますが、志半ばで逝去。その跡を継いだのは、80歳を超えて再び筆を握った妹の梅枝さんでした。
・『菜園』(昭和54年)

《仲間×ライバル(1)》
▽吉川啓示×伊藤弘人 感涙の祝宴
二人そろって院展に挑戦する中、先に入選したのは吉川さんより6つも下の伊藤さん。画塾の最年長で湘雲の一番弟子を自負していた吉川さんはガッカリ。その後も伊藤さんは入選を続け、吉川さんは落選を重ねます。二人の間に気まずい空気が流れていました。しかし、ある公募展の発表を見に上野まで出かけた二人。そこには吉川さんの名がありました。伊藤さんも自分のことのように大喜び。その晩、二人は相模原駅前にたった1軒だけあった居酒屋でしたたかに飲み、急な雨の中、ずぶぬれで肩を組み、大声で歌いながら帰路に就きました。二人のわだかまりがなくなった瞬間でした。
ベテラン画家となっても二人の仲は続きました。伊藤さんは生涯学習講座「あじさい大学」の講師などを務めていましたが、病に倒れ帰らぬ人となります。その跡を引き継いだのが吉川さんでした。同じ画塾で学んだ二人は、やがて同じ講座などを通して、300人を超える生徒たちに日本画の魅力を伝えました。

《仲間×ライバル(2)》
▽吉川啓示×山本姉妹 驚きの写生画
吉川さんは山本姉妹が湘雲画塾に入門して以来、美術学校で学んだ人たちの絵がどういうものか、気になって仕方がありません。そこで意を決して訪れた山本家で見た二人の絵にビックリ。そこには花や草がまるで写真のように精密に描かれていました。専門に学んだ人たちの絵とはこんなにうまいのか、と驚き触発された吉川さんは、写生の重要さを改めて知り、その日から必死に写生に取り組みました。

■相模湖を愛した日本画家

咲き誇る花を描いた
▽石井 了(1927–2018 旧相模湖町出身)
武蔵野美術学校(武蔵野美術大学)で学び、美術教師として地元の中学校で教鞭を執る傍ら、日本画家として豪華に花開く桜や梅の絵を専門に描きました。県立相模湖交流センターの緞帳画『明けゆく相模湖』も石井さんが描いたものです。若い頃には、自慢のスポーツカーでスケッチ旅行に出掛けたという、意外な一面もありました。
・『高原老桜』(平成10年)

■現在活躍中の日本画家たち

現代日本画界の俊英
▽吉村誠司(福岡出身 南区在住)
東京藝術大学在学中からさまざまな公募展に入賞し、日本画界のホープと言われていました。その期待通り、わずか40歳で院展の最高位に就いています。緑や青、グレーなど、独特の深い色が画面全体を霧のように覆う幻想的な作品を描き、高い評価を受けています。現在は作家活動の傍ら、同大学の教授として後進の育成に当たっています。
・『秋日和』(平成16年)

▽中里澪子(緑区在住)
市内の中学校で音楽教師をしていましたが、定年を機に吉川啓示さんらに日本画を習いました。
・『川底下村』(平成14年)

▽荒井三重子(南区在住)
独学で院展に入選後、日本画の大家の下で本格的に学び始めました。
・『聖堂』(平成19年)

▽松原秀伸(南区在住)
東京藝術大学で専門的に日本画を学んだ後に教員となり、市内の高校で美術を教えていました。
・『塔の街』(平成25年)

◆市民ギャラリーに行ってみよう!
日頃は市民の作品発表の場として使われていますが、市が収蔵する絵画や写真などの展覧会も開かれています。お買い物やお出掛けのついでに、ふらっと寄ってみませんか。
開館時間:午前9時~午後5時(展示により異なる)
休館日:水曜日、12月29日~1月3日
所在地:中央区相模原1-1-3(セレオ相模原4階)
・駅の改札から1分の好アクセス
・市内の作家を紹介するミニ展示コーナー
・図録などの美術専門書が並ぶ資料室
・お気軽にお立ち寄りくださいね! お待ちしています!(美術専門員 竹内さん)

◆市収蔵美術品展「日本画の世界に触れてみよう」
▽相模原の日本画―院展画家の系譜
本市の文化振興に大きな影響を与えてきた院展画家たちの活躍を、新たに収蔵した作品などを交えて紹介します。
日時:3月7日(土)~29日(日)午前10時~午後6時
会場:相模原市民ギャラリー

▽関連イベント
・アートスポット展
ミニ展示コーナーで荒井三重子さん、松原秀伸さんの作品を紹介します。

問い合わせ:相模原市民ギャラリー
電話042-776-1262

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