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広報さがみはら 令和3年1月15日号

相模原で触れる 伝統芸能「能」(1)

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神奈川県相模原市 クリエイティブ・コモンズ

相模原で、気軽に能を楽しめることをご存じでしたか。「能って難しそう」と思う人にも楽しめる「能の楽しみ方」をご紹介します。この機会に、相模原で「日本古来の舞台芸術」に触れてみませんか。

■そもそも「能」とは?
能は、歌と舞を組み合わせて表現される劇(歌舞劇)。古くは奈良時代に中国から渡来した「散楽(曲芸や奇術)」から発展した「猿楽」と呼ばれていました。

▽こんなところが特徴!
・「能面」をかけて(着けて)演じることが多い
・主人公は神様や幽霊などが多い
・過去の悩みや恨みなど、人間の深層心理を語って成仏する話が多い

■同じ「猿楽」から派生した「狂言」
能と一緒に演じられることの多い「狂言」。能と狂言は元々「猿楽」と呼ばれる一つの芸能でした。

▽こんなところが特徴!
・「能面」はかけず(着けず)、素顔で演じることが多い(鬼などの役は面をかける)
・主人公は生きている人が多い
・せりふを主体とする一般的な演劇に近い
・中世の庶民の姿を描いた喜劇が多い

能は悲劇を、狂言は喜劇を描くことが多いといわれています!

■地元で気軽に、能を楽しむ
能楽師 松山隆雄(まつやま・たかお)
13歳で能の名門・梅若六郎家に内弟子入門し、昭和46年に能楽師として独立。結婚、第一子誕生を機に本市へ。市内外で能の普及に尽力。国・重要無形文化財保持者(総合)であり、昨年11月に市政功労表彰を受賞。

▽能を伝える人がいなかった相模原で、社会に恩返ししたい
能楽師として独立し、すぐに家庭を持ち、どこか良い住まいがないかと探していたときに巡り合ったのが相模原でした。「相模原には能を伝える人がいない」と聞き、引っ越してきてからも能の道を追求する傍ら、私を能楽師として育て、支えてもらった社会に恩返しがしたいと思っていました。市民の皆さんが気軽に能に触れる機会を提供できたらと、さがみはら能の開催や相模原薪能への参加を続け、市内での活動歴は50年ほどになります。自宅に併設した能舞台を、平成29年に能楽資料館として一般公開したのも、多くの人が能に親しむ場をつくりたいという思いからです。

▽昔から変わらない「人の営み・思い」を、新しい挑戦で魅せる
能といえば“幽玄の美”。一般的には「敷居が高い」「特別」「遠い世界のこと」といった印象があるようですが、能の多くは、名のある人物の生きざまや、過去の事件を題材に、人間の内的な部分、人の思いに触れるものです。それは、昔も今も変わらない「人の営み」だと思っています。
一方で、能は大道具などの舞台装置がほとんどなく、極限まで単純化されています。風景を眺める場面で、それがどんな風景なのかは演者・観客の想像力にかかっています。同じ演目でも、演者が目の前の風景をどう描いているかで、ずいぶん雰囲気が変わってきます。実際にはそこにない風景でも、観客の皆さんが同じイメージを思い描いて、感動を共有できたら楽しいですよね。そんな思いもあって、自分が手掛ける新作には、その場面をイメージしやすくなるような工夫を織り交ぜてきました。
例えば、昨年11月のさがみはら能で披露した新作『百歳の母』では、楽器も通常の笛、小鼓、大鼓、太鼓の四拍子(4種の楽器の総称)に二胡を足し、旋律を笛と二胡の2つの楽器で奏でました。二胡は音の響きや振動が肌に染みるようで、二胡の演奏が舞台と世界観とをうまくつないでくれています。また、能舞台の背景に鏡板(松の背景)を使わず、大きなスクリーンに青や赤の色彩を投影したり、橋掛かり(演者が登場・退場する通路)の代わりに本来は能舞台にない緞どん帳ちょうを使って演者の登場や退場を見せたりすることで、登場人物の心情や作品の世界観をイメージしやすくするような工夫を取り入れました。これまで伝承されてきたものを大切にしながらも、作品を見やすく・感じやすくする「新しいものへの挑戦」を続けていきたいですね。

▽コロナの逆境をチャンスに変える
これまでの能は、お弟子さんに稽古をつけて、彼らの能に対する理解を深めてもらって公演に臨むという各流儀や役者が主催する内々の公演が多かったんです。そこに加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で稽古も公演もできない時期が続きました。公演も稽古も今まで通りのやり方が難しくなってしまいましたが、逆に言えば、新しい見せ方・公演の方法を考える時期が来たのかなとも思っています。例えば、年末にみんなでベートーベンの「第九」を合唱するように、能も一般の方に仲間と一緒に舞台を楽しんでもらうとか、公演前に体験を兼ねた催しを用意するとか。今後は、能をもっと身近で気軽なものとして親しんでもらいたいです。

・公演に二胡を取り入れたり、能面を自作したり、松山さんの能への挑戦は続いている
・昨年11月に開催されたさがみはら能で初披露された『百歳の母』。受け継がれてきた伝統と新しい試みが融合する

■市内在住の能楽師 松山先生直伝!「能」の楽しみ方
松山先生流の楽しみ方を紹介します。このほかにも衣装や音楽など、さまざまな魅力が詰まった能。ぜひ実際に生の舞台で体験してみてください。

《其の一》
▽せりふは分からなくてOK 雰囲気を楽しむ
能を見るときに大事なのはその場の雰囲気を楽しむこと。「能に正解はありません。一言一句理解しようとするのではなく、心と感覚で自分が何を感じたかを大事にしてほしいですね」
・音楽と舞が合わさって夢うつつの世界が目の前に。ストーリーや言葉が気になったら、後からゆっくり調べるのがお勧め

《其の二》
▽すり足でゆっくりと舞う 能楽師の動きに注目
登場人物のうれしさや悲しさを表す能の舞は、その高ぶった感情とは反対に、とてもゆっくりとした動きが基本。その動きは能楽師が長年鍛え上げた体幹が成せるもの。「能はバランスが大事、スポーツと一緒」と話す松山先生。洗練された一つ一つの動きをじっくり鑑賞しよう。
・すり足にも型が決まっている
・演者が化粧をしない能は、歩き方や所作などの動きで老若男女や神仏などの超人的な存在感を表現する。「(女性の役のときは)後ろ姿が女性に見えるといいなあと思って舞っています」

《其の三》
▽多彩な表情の能面で人物の心情を想像する
能の特徴の一つでもある「能面」は、幽霊や神仏など超人間的な役柄や女性に変身するための重要な道具であり、舞台上での「自分の顔」。女性や般若、老人など、演目によってさまざまな面の登場が楽しめる。また、面の角度で泣いているなどの表情が付くのも能面の面白さ。変わらないはずの能面に見られる悲しみや喜びなどの感情の変化で、登場人物の気持ちを想像するのも楽しみ方の一つ。
・松山先生が自作した老女の能面は一本のヒノキから作られたもの。「作る人の好きな顔に似るのか、若い女性の面は妻に、老女の面は母に似てるんですよね(笑)」

問い合わせ:
文化振興課 電話042-769-8202
市民文化財団 電話042-749-2200

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